イケダハヤト流の会社経営をすると非正規社員が増え、貧富の差が拡大する

イケダハヤト渾身の炎上記事

は不発に終わったようです。

経団連=労働者に残業させないと利益を出せない、無能すぎる経営者の集まり。

全く意味がわかりません。そもそもイケダハヤトは業種・職種に言及せず、一方的に残業=悪と決めつけるので、真面目に働いている日本経済を支えるサラリーマンから突っ込まれてしまいます。

へー……経団連を構成する企業って、従業員に過労死ラインを超えた残業させないと、まともに利益を出すこともできないんですね

上限1ヶ月100時間未満まで認めるというだけで、全ての企業が毎月毎月この時間まで残業している訳ではありません。

業種・職種によりますが、一般的にはむしろ残業させることによって会社の利益は減るのではないでしょうか?

「残業代未払いの問題もある」という声が聞こえてきそうですが、それは全く別の話です。

IT関連企業の場合

IT関連企業の場合、他企業のシステムの開発を一定の金額で受注するという案件も多いかと思います。

そのIT関連企業が残業をした場合としなかった場合とで、以下の条件で利益の比較をしたいと思います。

条件

  • 会計専門のブログではないので、会社の家賃・電気代・原価・など必要経費は考慮ぜず、単純に「売り上げ-人件費=利益」とする
  • 計算をわかりやすくするため、社員20人の企業で、給与は一律時給換算で1,800円
  • 1ヶ月20日稼働
  • 開発期間は6ヶ月
  • システムの進捗が思ったように進まず、全員毎日3時間の残業をすることになった
  • 受注金額は1,500万円、顧客からの仕様変更ではないため、追加の請求はできない

まとめたものが以下の表になります

受注金額 15,000,000
社員数 20
時給換算 1,800
残業時時給換算(25%割増) 2,250
稼働日数(1ヶ月) 20
開発期間(ヶ月) 6
残業時間(1日あたり) 3

受注した案件の利益

人件費(1ヶ月) 人件費(6ヶ月) 利益
残業無し 720,000 4,320,000 10,680,000
残業有り 855,000 5,130,000 9,870,000

残業しなかったら、納期はどうなるんだ?というツッコミはあると思いますが、あくまで残業したら利益が上がるか下がるかの比較のための表です。
当然のことながら残業はしない方が残業代がかからない分利益は上がりますし、電気代等の経費も抑えられます。

飲食業や販売業も営業時間が同じならば社員が残業してもしなくても売り上げは変わらないので、残業した分だけ利益が下がるのは誰でもわかるかと思います。

製造業がイケダハヤト流の経営をすると非正規社員がたくさん増えるよ

残業しない方が利益が出るとわかったところで次へ進めます。

日本経済を支える製造業。
私はその中小の製造業のシステム管理者として入社し、現在は製造現場の社員及びパートのマネジメントの仕事をしています。

製造現場のマネジメントの仕事を教えてくれた上司は元トヨタの一次会社に勤め、トヨタへの出向経験があるので、おそらく自動車関連の製造業は概ね同じ方法で稼働時間を計算していると思います。

私の稼働時間の算出方法

以下はプレス機Aで製造する製品4品番の今月の受注数及びその稼働時間の表です。
本来なら段取り時間も考慮しなければなりませんが、煩雑になり記事の趣旨がわかりにくくなるので段取り時間は考慮しないこととします。

品番 注文数 標準時間(秒) 労働時間(秒) 労働時間(H) 合計時間(秒) 合計時間(H)
1111111-1 20,000 16 320,000 88.9 648400 180
2222222-1 6,200 22 136,400 37.9 稼働日数(日) 22.5
3333333-1 10,000 8 80,000 22.2 標準稼働日数(日) 20
4444444-1 14,000 8 112,000 31.1 残業時間(H) 20
  • 標準時間→1つの製品を作るのにかかる時間
  • 標準稼働日数→残業や休日出勤等を考慮しないカレンダー通りの1ヶ月間の稼働日数
    社員なので1日8時間労働で計算します。
  • 稼働日数→標準時間から割り出した注文数をこなすための稼働日数
  • 残業時間→22.5日(稼働日数)-20日(標準稼働日数)=2.5日
    2.5日×8時間=20時間

この設備で4品番全ての注文をこなすために2.5日の休日出勤または月に20時間の残業が必要という結果になりました。

今月はこの設備を担当する社員には1日1時間残業してもらうことにします。

あとは各製品の細かな納期や材料の入り具合を確認して生産計画を立てていきます。

社員の残業を一切禁止にすると、非正規社員さらに増える

イケダハヤトは親の仇のように「残業禁止」と事あるごとに訴えています。

私は過労死するレベルの残業はさせるべきではないと思いますし、残業代目的の不必要な残業も無くすべきと思っています。

しかし、客先、さらにその先のトヨタ様が「○日までに○個納めよ」と言われればそれに従うしかありませんし、トヨタ様はイケダハヤトのような人物に

21世紀にもなって、車の納品が5年も先ですよ。人間にやらせるからダメなわけで、AIに任せて24時間稼働すればサクッと半月で納品できます。
生産性の低い無能なトヨタは5年以内に潰れるべし。

などと言われないように、必死に注文に応えようと生産しています。
(上の文章はイメージなだけで実際には発言していません)

注文数を完納するために必要な残業はせざるを得ないわけですが、イケダハヤトの言うように、社員の残業禁止はやろうと思えばできます。

設備の段取り等は社員がいる時間中に行い、上記の表の20時間の残業分は社員が帰った後にアルバイトにやってもらえば簡単にこなすことができます。

そうすれば会社的には残業代という割増賃金は払わずに済みますし、アルバイトという社員よりも安い賃金で作業をやってもらうことができます。

数字しか見ない経営者であれば、

「大津君!他の部署は売上総利益20%しか達成していないのに、君の部署だけは売上総利益40%もあるじゃないか!」

と褒められます。

こんな人員の配置、やれるものならやりたいです。
あれこれ(後述)考える必要もなく、利益も上がり、私の評価も上がる。
こんな楽な仕事はありません。

しかし、そのアルバイトの今月の労働時間はたった20時間。
時給1,000円として月収20,000円。
来月は私から「今月は注文少なくて社員だけで賄えるから今月は出勤無しでいいからね」と言われて、そのアルバイトはまともに生活できますか?

威勢良く「残業禁止」と言って、その犠牲になるのは非正規社員の弱い立場の人間です。

イケダハヤトは弱い立場の人間の味方の振りをしていますが、弱い立場の人間の収入をさらに減らし、より貧困した生活へ追いやろうとしています。

私は製品ごとの受注数と標準時間の計算式と睨めっこし、

  • パートAさんは標準時間より速いけど雑で品質が良くない
  • パートBさんは標準時間より遅い時もあるけど品質は安定している

などの個人の性格や特性を考慮し、安定した労働時間を確保できるように、誰にどの設備を任せようか毎日悩んでいます。

世の多くの管理職の人も同じ悩みを抱えていると信じています。
下っ端の一従業員すら2年も継続することができなかった、社会経験の乏しいイケダハヤトには理解することができないかもしれませんが。

せめて一面だけを取り上げて、「○○は悪い、これからは△△だ」と断言するのはあまりに無責任なことで、もっと多角的に物事を捉えるような人間になってほしいと思っています。

遊廓に泊まる (とんぼの本)
Posted at 2019.1.13
関根 虎洸
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